「世界はなぜ地獄になるのか」橘玲 小学館新書 の感想を記載。
橘玲さんの著書の新作。橘さんは現状の現実世界を忖度なく率直に言葉にしてわかりやすく伝えてくれるのでどの本も読んでいてとても面白い。今回も過去作品同様とても面白く、2時間ほどで読み終えた。特に胸に刺さった部分を自分なりの理解の中で紹介する。
①理想的だと思える誰しもが自分の立場が守られるリベラル社会では、逆説的にそこからドロップアウトする人達は誰も助けてくれず、そうなった状況は自己責任であり、救いがない状況となる。
②キャンセルカルチャー。東京オリンピックの小山田さん事例他を例に挙げているが、著書を読むと各案件では当事者が完全悪ではないことがよくわかる。一方で確かに付け込まれる隙があるのも理解でき、キャンセルさせることで快楽を得る人たちのターゲットになったことも致し方ない部分もわかる。人間誰しも立場の上の人に憧れながらも妬んでおり、チャンスがあれば叩き潰すことを狙っている。一般社会では表立って実施する人は少ないが、ネット社会ではデメリットなく快楽を得られるためキャンセルカルチャーが邁進する。現時点でこれを避けるには、地雷(特に議論が紛糾している話題等)には触れないことが唯一の対策である。
③マイクロアグレッション。自覚なき差別。明確でわかりやすい差別がなくなっていくと、より細かい日常的な差別が注目されていく。過去の経験、歴史から知らぬ間に植え付けられている事例は無自覚で日常に溢れており、気づかぬ間に他者を傷つけている可能性がある。一方で女性だからと女性特有のことに気をつけないとそれもセクハラとなる。これを束ねる会社の管理職は確かに大変だ。
④ 対策は避けること、中庸であること、お互いの立場を理解すること。最後に書かれていたが、今回の話は現代の負の側面に焦点を当てたものだったが、良い面を捉えるとこれだけ技術が栄え、個人が尊重される時代は過去に比べて幸せに生きることも可能であろう。負のリスクをしっかりと理解しておくことで地雷を避け、自分が得意な、楽しい生活を目一杯過ごすことが理想。一方で自分の楽しみが地雷となる危険性は常にある。楽しみは一つではなく複数持つことが重要だと感じた。